甘える君は可愛い

年下ワンコはご主人様が好き

 下ろせと言っても聞かない久世に、暴れて抵抗するけれど寝室の真新しいベッドに下ろされて両手を掴まれてしまう。
「久世!」
 その眼は自分を欲していて、波多は抵抗するのをやめて力を抜いた。
「キスと挿入は無し。舐めるのはここだけな」
 そう言うと、自分の下半身のモノに触れる。告白されたとはいえ、まだ二人の関係は会社の先輩後輩でしかないのだ。一線を越えさせるつもりはない。
 そのつもりで言ったのだが久世はやや不満そうだ。
「不満なら舐めるのも無しな」
 離せと腕を動かせば、嫌ですと首を振る。
「波多さんを舐めたいし、味を知りたい」
 と、ズボンを下ろされる。
 たちあがったモノを目にし、キスで感じてしまった事を恨めしく思う。
「波多さん、いっぱい蜜を垂らしてますよ」
「おい、舐めるだけ、だからなッ」
 今一度、そう釘を指す。
「解ってます」
 嬉しそうに裏筋を舐め、舌先で先っぽをしつこく弄られた。
 以前付き合っていた男と別れてから、好きになった相手はいたけれど、告白するまもなく失恋し、一人で処理するしかなかった。誰かに触られるのは本当にご無沙汰で、すごく感じてしまう。
「んっ、やだ、しつこい」
「でも先っぽをいじられるのすきでしょ、波多さん。こんなに蜜をたらして。そんなによい?」
 そう、そこを弄られるのはすごく好きだ。だが、それを口にしたら調子にのりそうなので別の事を口にする。
「そこを弄られたら誰だって感じるだろうが」
「そうなんですか? じゃぁ、俺のも触ってみてください」
 パンツを下ろしてたちあがったそれを見せつける。
「うわ……、なんか引くわ」
 脱いでも期待を裏切らない男だ。
 たちあがった雄は立派なサイズで、幾度もなく彼女を悦ばせてきたのだろう。
「えぇ、波多さんが可愛いからこうなったんですぅ」
 生理現象だと、久世はぶつぶつと言う。
「はぁ? 可愛くねぇよ」
 先端を弄らずにぎゅっと久世のを握りしめてやれば、久世がウッと短い声を上げる。
「生意気なんだよ。態度もコイツも」
 蜜を垂らし濡れたモノを擦りあげてやれば、目尻を下げ口元を綻ばす。
「嬉しい、波多さんが俺のを……」
 手の中で更に大きさを増し、その素直さが可愛くて、ムラッときた波多は自分のモノと一緒に擦りあわせた。
「はたさんの、熱い、きもちいい、です」
 とろけるような笑みを浮かべる久世に、胸が高鳴り芯が痺れる。
(なんて嬉しそうな顔をするんだよ)
「久世の癖に」
 自分の気持ちには素直になれない波多は、久世の見せる表情に反応してしまう事が悔しいのだ。
「んぁっ、波多さん……、俺の事、大輝って呼んで」
「良いぞ。でも、俺の事は名前で呼ぶなよ?」
「駄目なんですか」
 恋人同士な気分を味わいたいのだろうが、久世の考える事などお見通しだ。
 目元が潤んでいるのは気持ち良さ。しわが寄っているのは名前が呼べなくてショックだからか。
 こめかみを指でぐりぐりと押した後、
「言っておくが飼い主だから名前で呼んでやるだけだ」
 と耳元に唇を寄せて「大輝」と呼んでやる。
 その瞬間、ビクッと身体を震わせて欲を放ち、白濁が飛び散った。
「お前、それでイクのかよ」
 ねっとりとしたそれを指ですくい、久世の割れた腹へとすりつけて拭う。
「だって、耳元で名前呼びはきますって」
「そうか。なら今度は俺の番な。イかせろよ」
 はちきれんばかりに膨れ上がるモノを久世へと突き出す。
「あぁ、もうっ。久世さん、大好き」
 ぺろりと再び舌で刺激される。
「良いぞ……、大輝。もっと、あぁっ」
 程なくして波多のモノも絶頂を迎え、ぶるっと震えて欲を放つ。
「目に入ってないか?」
 顔にかかってしまった白濁をティッシュで拭ってやる。
「大丈夫です。それにしても……、波多さんのイき顔、可愛かったなぁ」
 互いの頬をすりよせる久世に、ウザいと顔を引き離す。
 これ以上、可愛いだのと言われ続け、甘えられるのは嫌だ。
「終わったらリビングへ行け」
 ベッドから出るようにドアを指差す。
「そんなぁ、これ、俺のベッドですよ?」
 波多さんと一緒に寝たいです、と、肩に頭をぐりぐりとさせる。
「はぁ? 舐めさせてやったのに文句を言うのか」
 この口はと、唇を摘まむ。
「ふぇ、そんらつもりは」
 乱暴に手を離せば、しょんぼりと肩を落としてベッドから出て服を身に着ける。
「おやすみなさい」
「あぁ」
 ぱたんとドアが閉じ、ベッドへ大の字となり寝転ぶ。
「ベッドがデカすぎなんだよ」
 一人だとやたらにスペースがあまり、それがなんだか寂しいとか思ってしまう。
 甘えられたくないと追いだしたのは自分だというのに、だ。
「くそ、あいつの思い通りかよ」
 落ち着かない気持ちのまま、枕に顔を埋めて目を閉じた。

 隣でパンツ姿の久世が眠る。
 しかも、面倒だとそのまま寝てしまった筈なのに、久世のTシャツをきていた。
 大き目のそれは尻まですっぽりと隠れていて、可愛い子がこれをしたら色っぽく見えるだろうが、三十路のオヤジがこの格好をするのは見た目にもキツイ。せめて下にパンツくらいはと思い、拾い上げて身に着ける。
 時計を見ればまだ起きるには早い。
 久世の胸に額をつけるように抱きついて目を閉じる。人の体温は気持ちの良い暖かさだ。
 すぐに波多は眠りにおち、次に起きたのはタイマーの鳴る音でだった。
 今だ抱きついていた事に気が付いて慌てて離れ、ベッドから身を起こす。
 寝起きは特に悪くない久世も、その音で目を覚まして目をこすりながら、
「おはようございます、はたさん……」
 と挨拶をする。
「おはよう。飯を作るから、その間に準備しておけ」
「ふぁい」
 あくびまじりに返事をし、久世がのそりと起ちあがる。
 そしてすぐにアッと大きな声を上げて、その声に波多はビクッとする。
「いきなりなんだよ!」
「一緒に寝てたのに怒らないなって思って」
 そこはスルーしていてくれたらよかったものを。
 チッと舌打ちをし、何も答えずにキッチンへと向かう。
「波多さん?」
 返事がない事にパンツ一丁のまま後をついてくる久世へと軽めの裏手パンチを顔に食らわす。
「おぅ……」
 それは鼻へと当たり、痛そうに擦っている。
「シャワーして、それから着替えて来い」
「はい」
 簡単な食事を用意し、風呂から出てきた久世に声を掛ける。
「俺は一旦帰るから。ちゃんと飯を食って。濡れた髪も乾かせよ」
 エプロンを背もたれに掛けて玄関へと向かう。
「波多さん」
「なんだ?」
 ちゅっと音を立てて軽く口づけられて、目を見開いてかたまる。
「朝、一緒にあのベッドで起きれて嬉しかったです。朝食も作ってくれてありがとうございました。愛してます」
「……バカ犬め」
 こんな些細な事で喜ぶ久世が愛おしくて胸がきゅっとなる。
「飯を食って、出かける準備ができたら迎えに来い。良いな?」
「はい、お迎えに上がりますね」
 濡れた髪をわしゃっと撫でて部屋を後にする。
 久世はすぐに迎えにくるだろうから、急いで帰りシャワーを浴びて準備をせねばならない。
 すっかり久世のペースに合わせている。それにぶつぶつと文句を言いつつも、仕方ないと思う自分がいた。