甘える君は可愛い

年下ワンコはご主人様が好き

 ごく普通のカレーで良いと言われたが、そう簡単に作れるものではなかった。
 はじめの頃は具が煮たりないとか、ルーが多かったり少なかったり、ネットの情報をみて自分なりに試したりして色々と試したが、ごく普通の家庭的なカレーには程遠い絶望的な味しかしなかった。
 市販のカレールーを使いよくぞここまでまずいモノが出来るものだ。
 料理の才能が無いのではと、落ち込んだりもしたけれど、ルーのパッケージに書かれている分量通りに作ると美味いというのをネットで読み、素直にその通りに作ることにした。
 その結果、なんとか普通のカレーが出来たと思う。
「見た目と匂いはカレーだな」
 と鍋の中身を覗き込みながら三木本がポツリと言う。
「味もちゃんとカレーですよっ!」
 食べてから言ってくださいと、皿に米を盛ってカレーをかける。
「召し上がれ」
 席に座る三人の前にカレーを盛った皿を置き、自分も席の着いて頂きますと食べ始める。
 久世は感想が気になってカレーに手を付けずに待つ。
「うん、カレーだ」
「あまり辛くはないんだね」
「あ、はい。中辛と甘口のルーを入れたので」
 しかも甘口の方が多めだ。
「野菜は不格好だし、ルーを入れ過ぎだが……」
 まぁ、美味いとは言えないが良いんじゃないか、と、波多からおまけの合格を貰った。
「よかったです。練習したかいがありました」
「そうか」
 三木本が波多を見て、何かを促す様に顔を動かす。
「後は波多が久世に教えるという事で」
「料理教室は今日で卒業だ」
 実は三人で話し合って決めたそうだ。
「えぇっ、そうなんですか。なんか、寂しいですね」
 皆で料理をするの、楽しかったですと見わたす。
「たまに四人で集まって料理すればいいじゃない?」
 と八潮の提案に、皆は頷く。
「それまでにもっと腕を磨いておけよ」
 三木本に背中をおもいきり叩かれ、波多に視線を向ける。
「はい。波多さん、よろしくお願いします」
「あぁ。お前の面倒は一生見るつもりだ……、あっ」
 そう口にした後、口元を押さえる。
「波多君、言うねぇ」
 その言葉の意味に気が付いた八潮が、にやにやとした表情を浮かべている。
 三木本は傍観者にまわり、久世は二人の目の前で波多を抱きしめた。
「はい、俺も一生、翔真さんを愛しますから!!」
 スリスリと頬に頬を摺り寄せて、見えないハートを沢山とばす。
「えぇぃ、鬱陶しいわ、バカ犬」
 頬を掌で押し除けられ、体が離れる。
「はいはい。二人とも、後片付けはしておくからお帰りなさいな。色々とあるんだろう?」
 とウィンクをして見せる八潮に、
「……はい。後の事はよろしくお願いします。大輝。行くぞ」
 頬を染めた波多が、久世のネクタイを掴まれて引っ張る。
「八潮課長、三木本さん、失礼します」
「あぁ」
「ワンコちゃん、後でメール頂戴ね」
「はい、必ず!」
 手を振る八潮に振り返し、波多と二人きりになった所で、
「余計な事は書くなよ?」
 と釘をさす。
「はい。嘘は書きませんから」
 そう返事をしたら、何か言いたそうに口をパクパクとさせた後、肩を落として「もう、いい……」と何かをあきらめたかのように呟いた。  

※※※

 部屋に入るなり、すぐに波多を求めた。
 シャワーを浴びたいという言葉は、キスでふさいでしまう。
 このままの波多を食べたい。そう告げれば、仕方なさそうに頷いてくれた。
「んっ、大輝、そんなに触られたら」
「そんな事を言って、いやらしい身体をしているんですから、いっぱい触ってあげないと満足できないでしょ?」
「いやらしくなんて、ない」
 目元を赤く染めながらキッと睨みつけられる。
 それが可愛くて、もっと意地悪な事を言いたくなってしまう。
「へぇ、でも、気持ち良いっていってますよ? 身体は正直ですよね」
 トン、と胸の真ん中を指で叩き、こことは違うという。
「うるさいっ」
「そんな翔真さんも好きですから良いんですけど」
 素直じゃない所も含めて好きだ。
 ゆっくりと肌を撫で、口角を上げる。
 その表情を惚けた顔で見つめる波多に、芯が震えて熱があがる。
「もうっ、可愛すぎます、その反応!」
「お前が、俺をそうさせるんだろうが」
 顔を隠すようにぎゅっと首に腕を回してしがみつかれ、背中を撫でる。
「顔が見えませんよ」
「見なくていい」
「嫌です。顔を見せてください」
 顎を掴み顔を上向きにさせる。
「やっ」
 ふるっと首を振り、その手から逃れようとする波多に、深く口づける。
「んふ」
 水音をたてながら舌を絡めて蕩けあい、そして糸を引きながら唇が離れる。
「はぁ、翔真さん」
 額同士をくっつけ、頬を両手で包む。
「後、良いですか?」
「……あぁ」
 鞄の中にあるから、と言われて、久世はそれを取りにベッドから降りる。
 紙袋に入った物を取り出して中身を見る。
「持ってきてくれたんですね」
「あぁ」
 実は自分も準備はしてあるのだが、波多が自分との行為のために用意してくれた事が嬉しくてそれを使わせてもらう事にした。
「あれ、使用済……?」
 半分は使ってある透明な液を見つめ、波多は恥ずかしそうな表情を浮かべる。
「もしかして、ここ、慣らしてくれたんですか?」
「そんなのどうだっていいだろ! ていうか、お前以外の男に使ったのかもしれないだろ」
 そっちを疑えよと波多は言うが、先ほどの反応もだけれど、わざわざそんな事を言う時点でそれはないだろう。
「それはないので。ねぇ、翔真さんの口からちゃんと聞きたい」
「……! そうだよ、いざって時に俺のせいで挿入できなかったら嫌だからだっ」
 恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、涙目で睨みつける。
(あぁ、もう、この人は! どれだけ俺をキュン死させるんですか!!)
 たまらず、久世は波多の脚を掴んで開く。
「うわっ、お前、いきなり」
「翔真さん、ありがとうございます。俺、頑張りますね」
「え、いや、そんなには頑張らなくても……、ひやぁっ」
 ローションをたらして中へと指を入れてほぐしながら良い所を探っていれば、波多の身体がビクッと飛び跳ねた。
「んぁっ」
「ここ、良いんですね」
 目を弓なりに細めて唇をぺろりと舐める。
「んんっ、よせ、そこばっかりっ」
「翔真さんの良い所、ちゃんと覚えておきたいんです」
 さらに指を増やして弄れば、
「もう充分だろうが! もう、お前のをよこしやがれ」
 涙目を浮かべ、後ろをひくつかせる。
 誘っているとしか思えない、その姿がたまらない。
「はい。美味しく召し上がってくださいね?」
 たちあがったモノを後ろに宛がうと、中へとゆっくり挿入する。
「しょーまさんの中」
 すんなりと咥え込む、波多の中は熱くそして柔らかい。
「きつく、ないか?」
「大丈夫ですよ。貴方が俺のを受け入れるために頑張ってくれたお蔭です」
「そうか」
 ホッとした表情を浮かべる波多に、胸がきゅっと締め付けられる。
 こんなにも愛おしい人はいない。
「翔真さんの事が好きすぎてどうにかなりそうです」
「はっ、お前は、既に、どうにかなってる、だろうが」
 俺を満足させろよ、と、ニィと口角を上げる波多に、
「はい、全身全霊をかけて」
 ニッコリと良い笑みを浮かべ、激しく中を突きはじめた。