Short Story

甘い君にくらいつく

 林の好きなものは、姉の沙世とその家族、お世話になっている会社の社長、そして酒と甘いモノ。
 同僚に対してはそれ以外の感情は特に無く、清宮に対しても同じだのだが、彼から貰った手作り菓子を食べてから少しずつ興味を持つようになった。
 滅多に自分の話はしないのだが、義兄と沙世と一緒に酒を飲んでいる時に清宮の事を話した。
 後輩で菓子作りが美味い事くらいしか話してはいないが、やたら嬉しそうな表情を二人して浮かべる。
「今度連れていらっしゃいな」
 と、沙世に言われて、清宮なら誘ってもいいかと思っていた矢先、たまたま合コンの話をしているのを耳にしてしまい、自分と約束があるといって邪魔をし、実家へと連れて行って菓子まで作らせてしまった。
 家族にすんなりと受け入れられ、それからもっと仲良くなりたくなり、メールを送った。
 それも何度目かの頃、清宮がうっかりと口を滑らせた。
 男の方が良いと、それを聞いた途端、それなら自分でも良いのではないかと思ってしまった。
「俺とでは嫌か」
 と口にする林に、
「いや、そういう事じゃなくて。男の人とするの平気なんですか」
 躊躇いながらそう聞かれる。
「さぁ、どうだろうな」
 男とか女とかそれ以前にあまり人に興味がない。だが、清宮は別なのだ。
「もしかして興味本位、とか」
 そう聞かれて、そういう訳ではないので、
「相手がだれでも良いのなら、俺でも良いだろう?」
 とかえす。
「もしかして合コンの日、俺を誘ったのもそういう事ですか」
「そういう事とはなんだ?」
「独占欲」
「あぁ、成程な。そうなるのか」
 腑に落ちる。だから邪魔してでも実家に連れて行こうと思ったのか。
 抱きしめられて、それに応えるように抱きしめ返す。
「俺のを受け入れてくれるってことですか」
 ときかれて、清宮がそう望むならそれでいいと思った。
 だが、その時は挿入なしで擦りあうだけのものだったが、どんなに美味い酒や菓子に出会った時ですらここまで胸は高ぶらなかった。
 またすぐにでも味わいたい。あの時、我慢させた声も聴いてみたい。
 清宮に「また、したい」とそう口にしていた。

 再び清宮に触れる機会を得たのは一週間後で、姉の所で食事をし、それから林のマンションへと向かう。
 シャワーも浴びずにそのまま服を脱がせてベッドへと横になった。
「どうする、すぐにいれるか?」
 林には男同士の知識はなく、全て清宮に任せようと思っていた。
「そのことなんですけど、俺が貴方のを受け入れてもいいでしょうか?」
「あぁ、俺は構わないが……」
 清宮が望む方で良いと思っていた。しかもこの日の為に準備をしてくれていたそうで、それを聞いた時には胸がなんだかむずむずとした。
「少し待っててくださいね」
 と、林のモノを口でくわえて後ろへと手をまわした。
「くっ」
 自分の上で下半身のモノを咥えながら自分の後ろを弄る姿が妙に色っぽくて興奮してくる。
「んぁっ」
 噛んで舐めまわしたい。
 そんな欲が林を支配する。
「清宮、お前を噛みたい」
「ん、後で」
「なら、舐めさせろ」
 顎を掴み上を向かせると、林のモノから口をはなす。
「駄目ですよ。まだ後ろがほぐれてないんですから」
「俺がそこをやる」
 清宮の指が入ったままの場所へ自分の指を入れる。
「え、やっ、ちょっと」
「お前の中、柔らかない」
「あっ、そんな」
 中を広げるように指を動かせば、身体を反らしビクビクと震えだす。
「はぁ」
「あぁ、うまそうだな」
 胸へと食らいついて吸い上げる。
「や、だめぇ」
 ちゅっと音をたて唇を離すと、今度は舌先でころがす。硬く突起した箇所は感じるようで、後を弄る指を締め付ける。
 こんな風に自分のも締め付けられたら、どんなに気持ちが良いだろうか。
「きよみや、はやく入れたい」
 中の指がある箇所に触れた途端、身体が飛び跳ねて、
「ん、ふぁぁぁぁっ」
 腹に暖かいモノをかんじて見れば、イってしまったようで蜜をまき散らす。
「俺もイかせろよ」
「指、もう一本増やしてください。でないと林さんのは無理……、あっ」
 さらに中へ指を増やし、自分のモノを押し付けながらこすり付ける。
「やっ、またすぐにいっちゃうから」
「お前のイき顔、悪くない」
「そんな事、言わないでっ」
 恥ずかしいと、額を林の胸にくっつけて顔を隠す。
 こういう反応は可愛くて好きだ。
「顔、隠すな」
 もっと見たいと、キスをしながらこちらへと視線を向かせる。
「ん、林さんってこういう事をするんですね」
 ずるいですと、頬を膨らませる。
「お前が可愛いからだろ」
「なっ、やめてください。さっきから恥ずかしい事ばかり」
「お前が言わせている」
「もうっ、黙って」
 言葉をキスでふさがれる。
 もう限界だと、指を抜き一緒に中に入り込んでいた清宮の指も抜く。
「んぁっ」
 唇が離れて、糸がつながりあう。
「もう、良いよな」
「はい。貴方のを中に下さい」
 大きく膨らんだものを挿入していく。
「きついな。平気か?」
「ん、だいじょうぶ、です」
 辛そうな表情を浮かべているが止めてやることは出来ない。
 深い所まで入り込んだモノをゆっくりと突き上げれば背をのけ反らせる。
「はぁっ、やばい、はやしさんの」
「何がやばい?」
「きもちいい、です」
 へにゃっと顔を緩め、髪を撫で額にキスをする。
「清宮、お前……」
 胸がときめく。
 たまらなくなって、彼をベッドへと押し付けて激しく中を突いた。
「ひゃぁっ、ちょっと、あっ、あぁっ、やだぁ」
「ふっ」
 互いに放ちあうが、抜かずにさらに中を突く。
「まって」
「待てない」
「だめぇ……」
 すぐに元気を取り戻し、かたくなって立ちあがる。
「こんな、なのに?」
 掴んでこすりあげれば、甘い声をあげる。
「貴方が」
「そうだな、俺がさせてる」
 清宮の弱い所を突けばしめつけられ、互いに快楽へと落ちていった。

 二人の間で約束をした。肌を重ね合うのは次の日が休日の時だけと。
 一週間が待ち遠しくて、会社でも清宮に噛みつきたくなるが、それをグッと我慢する。
 それが周りには不機嫌に見えるらしく、清宮が甘いものと共に様子を窺いに来るのだが、更に眉間のシワが深くなり、たまたまそれが社長に見つかって、怖いよと指で押されてしまった。
「林さん、どうしたんです?」
 そんな事を聞かれてもこたえられるわけがなく、なんでもないとぶっきらぼうにそう返事する。
「金曜日に結衣ちゃんにクッキーの作り方を教えてとお願いされまして」
「結衣に?」
 まさか結衣に邪魔されるなんて。
「はい。男の子にあげるんでしょうかね」
 可愛い姪っ子の頼みなのだからと自分は我慢すべきなのだが、どうにも機嫌が悪くなる。それを勘違いした清宮が、
「あ、もしかして妬いてます?」
 とニヤニヤとした表情を浮かべる。
「違う」
 清宮から顔を背け、引き出しからタブレットを取り出して噛み砕く。
「林さんってば、結衣ちゃんの事が相当可愛いんですね」
 まだ勘違いをしている清宮にプツリと何かが切れた。
「こい」
「え、あ、ちょっと」
 腕を掴んで給湯室へと向かい、壁際に押しやり口づけをする。
「あっ……」
 驚いて目を見開く清宮の顔が見る見るうちに赤くなり、溜飲が下がり唇を離す。
「俺が嫉妬したのは結衣にだ」
「なっ」
「俺は菓子よりお前が良い」
 力が抜けたかずるずると床へくずれおちる。
「仕事中に、何言ってんですか」
「妬かせるお前が悪い」
「信じられない」
 目尻に涙を浮かべながら見上げてくる清宮に、もう一度口づけをした。
 
 落ち着くまで一人にして欲しいと言われ、給湯室から自分のデスクへと戻る。
 それから数分後。
 缶珈琲を二本持った清宮がデスクに戻る。
「結衣ちゃんとの約束は行かせて頂きます。その後は……」
 俺を好きにしてくださいと真っ赤に頬を染めながら耳元で言い、缶珈琲を林のデスクの上へと置いた。
「そうか」
 お菓子と清宮と両方食える。
 大好きな物が二つも手に入るのだから林の機嫌はみるみるうちに良くなった。
「林さん、解りやすいです」
 照れる清宮に微笑んで、缶珈琲のプルトップを開けた。